クリスマスなので、ルカ2:9~11を取り上げたいと思います。一年前も取り上げたのですが、殆ど説明なしでアップしてしまったので、少し文法的なことも加えたいと思います。下のテキストは私がWordで作成したものを画像処理したものです。
本文の古典ギリシャ語は、聖書アプリのTHGNT、その下はBible Hubの英語対訳になります。文法の詳細はBlue Letter Bibleをご参照下さい。黄緑色とオレンジ色の文字は、それぞれ動詞と名詞になります。なお、初心者の為間違いがあるかも知れないことを、予めご了承ください。😊
ἄγγελος(アンゲロス)
・語根:ἄγγελος(アンゲロス:使者、天使)
・English:an angel
・意味:天使
・文法:男性名詞・単数・主格
κυρίου(クリウー)
・語根:κύριος(クリオス:主)
・English:of (the) Lord
・意味:主の
・文法:男性名詞・単数・属格
ἐπέστη(エペステー)
・語根:ἐφίστημι(エフィステーミ:近くに立つ/現れる)
・English:stood by, appeared
・意味:立ち現れた
・文法:アオリスト・能動・直説法・三人称単数
δόξα(ドクサ)
・語根:δόξα(ドクサ:栄光)
・English:(the) glory
・意味:栄光
・文法:女性名詞・単数・主格
περιέλαμψεν(ペリエランプセン)
・語根:περιλάμπω(ペリランポー:周りを照らす)
・English:shone around
・意味:周囲を照らした
・文法:アオリスト・能動・直説法・三人称単数
ἐφοβήθησαν(エフォベーセーサン)
・語根:φοβέω(フォベオー:恐れる)
・English:they feared
・意味:彼らは恐れた
・文法:アオリスト・中動・直説法・三人称複数
φόβον(フォボン)
・語根:φόβος(フォボス:恐れ)
・English:fear
・意味:恐れを
・文法:男性名詞・単数・対格
この節の中に「アオリスト」という時制が3ヶ所、10、11節にも出て来ますが、英語の文法にはない時間の考え方なので今一つピンと来ません。便宜的に、word by wordの対訳は過去形になっていますが、ギリシャ語の時制の考え方がちょっと違います。
最初の動詞「ἐπέστη」に関して考えると、英語の過去形とは異なり、時間よりも「出来事を一まとまりとして捉える」時制です。ἐπέστη(立ち現れた)は、天使の突然の出現という決定的な出来事を示しています。この説明でもまだぼんやりです。^^;
英語の現在完了形が使えないのは、結果・影響が現在にも及び、時間軸が重要だからです。ギリシャ語アオリストは、結果や継続には関心がなく、時間軸も主眼ではありません。ただ「起こった出来事」を一つの事実として提示されます。
調べているうちに、一番分かり易い例に出会いました。Chat GPTによる「直感的なたとえ」が一番腑に落ちました。↓
アオリスト:
・「雷が落ちた」(1回の出来事)
現在完了:
・「雷が落ちた。その影響で停電している。」
過去完了:
・「別の出来事が起きる前に、雷が落ちていた。」
εἶπεν(エイペン)
・語根:λέγω(レゴー:言う)
・English:said
・意味:言った
・文法:アオリスト・能動・直説法・三人称単数
φοβεῖσθε(フォベイスセ)
・語根:φοβέομαι(フォベオマイ:恐れる)
・English:fear
・意味:恐れよ(μὴがnotという意味で、恐れるな)
・文法:現在・中動・命令法・二人称複数
εὐαγγελίζομαι(ユアンゲリゾマイ)
・語根:εὐαγγελίζομαι(ユアンゲリゾマイ:良い知らせを告げる)
・English:I proclaim/bring good news
・意味:福音を告げる
・文法:現在・中動・直説法・一人称単数
χαρὰν(カラン)
・語根:χαρά (カラ:喜び)
・English:(of) joy
・意味:喜びを
・文法:女性名詞・単数・対格
ἔσται(エスタイ)
・語根:εἰμί (エイミ:〜である)
・English:will be
・意味:〜となる
・文法:未来・中動・直説法・三人称単数
λαῷ(ラオー)
・語根:λαός(ラオス:民)
・English:people
・意味:民に
・文法:男性名詞・単数・与格
「φοβεῖσθε(フォベイスセ)」は「φοβέομαι(恐れる)」語尾に-εσθεが付いているのは、この動詞に限らず、二人称複数(あなたがた)現在・命令形の特徴です。ちなみに、二人称単数(あなた)の場合は「φοβοῦ」で、語尾が-ουになります。
「εὐαγγελίζομαι(ユアンゲリゾマイ)」はドイツ語のように二つの単語を組み合わせて作られた語「εὖ+ἄγγελμα」です。構成用語は「良く、善く(英語の well)+ 使者の知らせ、報告(message)」で「良い知らせを伝える」という意味になります。
これは名詞→動詞への展開で、元々重要なのは名詞「εὐαγγέ λιον(福音)」で、 εὐαγγέ λιον=good+message=良い知らせ→「良い知らせを伝える」になります。又、ここで気になったのは冒頭の読み方です。現代ギリシャ語と古典ギリシャ語の読み方が違っていたからです。↓
古典ギリシャ語:
εὐαγγέ λιον → eu-angelion → エウ・アン・ゲ・リオン
現代ギリシャ語:
εὐαγγέ λιον → evangelion → エヴァンゲリオン
枝葉になってしまうのですが、10数年前に聖書を原書で読みたくて、ギリシャ語教室に1年通ったことがあります。新約聖書が古典ギリシャ語で書かれているとは知らず、うっかり現代ギリシャ語会話教室に行ってしまいました。😅
殆ど忘れていましたが、急に「ヤーサス」「エフハリスト」「パラカロ」という言葉が浮んで来ました。気になるので、改めて調べてみたらこのような意味でした。
① ヤーサス(Γειά σας)
意味 Hello Hi (別れ際なら)Goodbye
Γειά σας は 丁寧形・複数形
初対面・教室・店・複数相手に使う安全な挨拶
② エフハリスト(Ευχαριστώ )
意味 Thank you Thanks
③ パラカロ(Παρακαλώ )
You’re welcome(どういたしまして)
Please(お願いします)
Here you are(どうぞ)
Pardon?(え?)
パラカロの意味は「どういたしまして」以外は知りませんでした。教室以外でギリシャ語を話すことはないかも知れませんが、勉強になります。
ἐτέχθη(エテクセー)
・語根:τίκτω(ティクトー:産む、生む)
・English:was born
・意味:生まれた
・文法:アオリスト・受動・直説法・三人称単数
σωτὴρ(ソーテール)
・語根:σωτήρ(ソーテール:救い主)
・English:Savior
・意味:救い主
・文法:男性名詞・単数・主格
ἐστιν(エスティン)
・語根:εἰμί(エイミ:〜である)
・English:is
・意味:〜である
・文法:現在・能動・直説法・三人称単数
χριστός(クリストス)
・語根:χριστός(クリストス:油注がれた者、メシア)
・English:Christ
・意味:キリスト
・文法:男性名詞・単数・主格
κύριος(クリオス)
・語根:κύριος(クリオス:主)
・English:(the) Lord
・意味:主
・文法:男性名詞・単数・主格
πόλει(ポレイ)
・語根:πόλις(ポリス:町、都)
・English:(the) city
・意味:町に
・文法:女性名詞・単数・与格
Δαυείδ(ダビィード)
・語根:Δαυείδ(ダビード:ダビデ)
・English:David
・意味:ダビデ
・文法:固有名詞・不変化
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