前回の続きで、コリント人への第一の手紙13:3を取り上げます。下記テキストは、聖書アプリのTHGNT、その下はBible Hubの英語対訳になります。文法の詳細はBlue Letter Bibleをご参照下さい。黄緑色とオレンジ色の文字は、それぞれ動詞と名詞になります。
活用: ψωμίσω(プソーミソー)
語根: ψωμίζω(プソーミゾー)
English: I may give away
動詞 - アオリスト・能動態・接続法・1人称単数
活用: ὑπάρχοντά(ヒュパルホンタ/ヒュパルコンタ)
語根: ὑπάρχω(ヒュパルホー/ヒュパルコー)
English: possessions
動詞 - 対格・現在・能動態・分詞・中性複数
活用: παραδῶ(パラドー)
語根: παραδίδωμι(パラディドーミ)
English: I may deliver up
動詞 - アオリスト・能動態・接続法・1人称単数
活用: σῶμά(ソーマ)
語根: σῶμα(ソーマ)
English: body 名詞 - 対格・中性・単数
活用: καυθήσομαι(カウセソマイ)
語根: καίω(カイオー)
English: to be burned(NKJV), I may boast(Bible Hub) 動詞 - 未来・受動態・接続法・1人称単数
活用: ἀγάπην(アガペーン)
語根: ἀγάπη(アガペー)
English: love
名詞 - 対格・女性・単数
活用: ἔχω(エホー/エコー)
語根: ἔχω(エホー/エコー)
English: have
動詞 - 現在・能動態・接続法・1人称単数
活用: ὠφελοῦμαι(オーフェロマイ)
語根: ὠφελέω(オーフェレオー)
English: I am profited
動詞 - 現在・受動態・ 直説法・1人称単数
古典ギリシャ語のテキストは、聖書アプリのTHGNTをコピーペイストしたのですが、冒頭の「κἂν(カン)」はBlue Letter BibleやBible Hubに合わせて「καὶ ἐὰν(カイ エアン)」に替えました。「κἂν」は単に「καὶ ἐὰν」= and if の短縮形になります。
上のテキストの英訳はBible Hubの対訳です。口語訳の「たといわたしが自分の全財産を人に施しても」にあたる所は「And if I may give away all the possessions of me」ですが、下枠のNKJVでは「And though I bestow all my goods to feed the poor」となっています。
「the poor」という言葉は、ギリシャ語本文にはありません。調べた所、「ψωμίσω(プソーミソー)」という言葉には、「人に食べ物を与える」「食べさせる」「養う」のような意味がありますが、誰に食べさせるのか?⇒貧しい人達と補って訳すのが伝統的になっているようです。
他の英訳も比較してみると、
KJV: And thought I bestow all my goods to feed the poor. (the poorを補う)
ESV: If I give away all I have. (より直訳的でthe poorは省略)
NASB95: If I give all my possessions to feed the poor. (the poorを補う)
このように、本文にはありませんが、動詞の含意を明確にする為に英訳ではしばしば補われるということです。
それから、「ὑπάρχοντά(ヒュパルホンタ)」は動詞(語根はὑπάρχω)なのに、名詞「possessions」という訳になっています。これは動詞の分詞形になって冠詞「τὰ 」が付いて名詞化されています。
又単語の頭の「ὑ」は「ὐ」と似ていますが、上の記号の向きが違います。最初のアポストロフィーの反対向きの記号が付くと[ h ]という音が入るので「ヒュ」となり、右側のアポストロフィーが付いているのはそのまま「ウ」と読みます。